40歳の誕生日と生後2ヶ月の息子との宮城帰省

先日、とうとう40歳になった。39歳後半くらいから自分はほぼ40歳の気分で過ごしていたのでなんということはないかと思ったけど、いざ30代が終わったと思うと、なぜか切なくなった。30歳になったときも、くさくさした気持ちになって、仕事終わりに新宿の占いのやかたで占ってもらった。はじめは手相を見てもらうと思ったが、30歳なら手相くらいじゃ期待するものはなにもわからないよと言われて、算命学で占ってもらった。たしか3000円くらいした。その結果を友達が営むコワーキングスペースに持って行って一緒に読んでなんやかやと話したのが懐かしい。

40歳の誕生日も特に何事もなく、翌日から宮城の実家に帰省予定だったので、その荷造りをして、夜はドミノピザを頼んで夫と二人で小さいピザを一枚ずつ食べた。息子が泣いてしょうがなかったので届いたピザを眺めながら授乳をしていたらあっという間に冷めてしまったけど、ひさびさの宅配ピザはおいしかった。 そう考えると、30歳のときからはだいぶ状況は変わっていて、結婚したし子どももできた。あの頃占いで知りたかったような未来は、理想通りでないことはところどころあれども、おおむね叶ったのじゃないかと思う。ありがたいことだ。

30歳のときは、未来がどうなるか全くわからないことがとにかく不安だった。仕事もうまくいってなくて年齢のわりに給料も少なかったし、恋人もいなかった。確定していることがあまりなかった。40歳は、いろいろ確定していることが多くなってくる。あと20年くらい普通に頑張ればこういう仕事はできそうだとか、給料はどのくらいになりそうだとか、子どもを育てるならお金がどのくらいかかるとか、家を建てるならどうとか。あの頃より満たされたことは多いけれど、その分、身動きできる範囲も心地よい程度では絞られてきたんだなと感じる。次の10年、50歳になる頃には、今思いもよらないことがどのくらい起きているんだろう。そういうことが少しでも起きるような人生であるように、動き続けて変わり続けていきたいと思う。

というわけで(?)、今週は2泊3日で実家に帰省してきた。初めての遠出、初めてのお泊まり、しかも2泊ということで、ちゃんとやれるのか、体調を崩したりしないかいろいろと不安だったが、何事もなく戻ることができた。2ヶ月で泊まりがけは早いと思う人もいるかもしれないが、息子にとっての曽祖父母(私の祖父母。なんと二人とも健在)になるべくたくさん会わせてあげたいのと、夫が育休中のうちに一度行っておきたかったのもあって、挑戦することにした。先日訪問してくれた助産師さんにそのことを話したら、いいですね、大丈夫ですよ、と優しく背中を押してくれたのが心強かった。その時はじめてちゃんと息子を連れ出すことへの罪悪感がなくなった。帰省までいかずとも、外出などのチャレンジにはいつもうっすらと罪悪感がつきまとう。

車移動や新幹線ではほとんど困ることはなく、息子も空気を読んでか終始すやすや眠ってくれた。むしろ実家についてからが大変で、昼も夜もわりかしよく泣いた。あまり泣いているところを見たことがなかった両親が、どこか痛いんじゃないか、熱はないかといって心配していた。実家から戻って1日たつ今のところ異変はないので、単に普段と違う刺激に興奮していたのじゃないかと思う。

実家では、初孫ということもあって、みんなが息子を可愛がってくれた。私が子どもの頃に使っていたという、レトロなおもちゃも出してきて遊んだりした。現代のおもちゃでは聞いたことがないようなものすごく複雑で幻想的な音がするおもちゃで、息子が目を丸くして興味津々でその音を聞いていた。

他にも、母が子ども向けの歌を歌うので、それに合わせて合唱した。ぶんぶんぶんとか、犬のおまわりさんとか、春が来たとか、とにかく選曲が古風だったので笑ってしまった。かくいう私も今はどういう童謡が歌われているかなんてわからないのだけど。ネットで「0歳 手遊び」とかで検索して出てくる歌をいくつかうろ覚えのまま母に教えて一緒に歌った。母は昔から歌うのが好きで、2人で車に乗っている時などは学校で習った曲なんかを適当に合唱したりしていた。母は子どもの頃聖歌隊に入っていたのもあって、即興で簡単なハモリも入れられる。なんどもせがんでいろんな曲でハモってもらったものだ。その後も、母が引き出しから木製のリコーダーを出してきて、エーデルワイスなんかを吹いたりするので、それに合わせて歌ったりもした。

2日目は、母の古い着物を着て近所の神社にお参りに行き、写真を撮った。お宮参りは関東でちゃんとしたのをやるのだけど、その予行演習みたいなものになった。母がわざわざ和裁の先生を呼んでくれて、家で着付けてもらった。夫もアンサンブルの着物を着た。息子も赤ちゃん用の袴を着せた。着物と袴が繋がっていて、スナップボタンで全部一気に着せられるようになったものだ。ネットで買ったものだったけど、どんな作りになっているのかと、和裁の先生も興味を示していた。着物についての知識なんかを話してもらいながらあれよあれよと1時間ほどで2人分の着付けが完了して、魔法のようだった。

最近曽祖父が内臓やら目やらにちょこちょこと不調が出てきて、寝たきりというわけではないけれどおっくうがって寝床からなかなか出てきてくれなくなっていた。着物を着たよと声をかけたら、寝巻きのまま出てきてくれたので、一緒に写真を撮ることができた。私と夫と息子、両親、祖父母、総勢7人の集合写真が撮れた。みんな元気なうちにこういうことがたくさんできたらいい。(これも40歳近くになってきて思うようになったことだ。30歳の頃はこんなこと思いもしなかったし、実家なんかめんどくさがってなかなか帰らなかった。)

そんなこんなで、短い日数ではあったけど、いろんなことをして遊んで帰ってきた。家に着いてしばらくすると、息子がいつもより多くクーイングすることに気がついた。ベビージムの下でじたばた遊びながらくぅーくぅーと一人で何度も呟いている。普段はほとんど夫婦2人としか接してないので、みんなに囲まれて3日過ごしたことが息子にとって良い刺激になったようだ。ずっと息子とお話ししたくて、毎日あーとかうーとか言ってクーイングの真似事をしたり、たわいないことをとにかく話しかけたりして頑張っていたので、それよりも実家での数日の刺激でこんなに変わるのかと嬉しい反面ちょっとだけしょぼくれた。それでもくぅーくぅーと話す息子の口元が愛おしすぎて誰の手柄かとかそんなことはすぐにどうでもよくなるのである。